「第33回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」の最終選考会が、11月22日に開催された。1988年にスタートし、武田真治、袴田吉彦、小池徹平、溝端淳平、三浦翔平、菅田将暉など、多くのスターを輩出してきた同コンテストは現在、ファンコミュニティサービス「CHEERZ for JUNON」や、ライブ配信サービス「SHOWROOM」を用いたファン参加型の審査を取り入れ、初のオンライン選考を実施するなど、時代の流れに沿って変化を続けている。コンテストを主催する芸能誌「JUNON」(主婦と生活社)の井原康太郎副編集長に、歴史あるコンテストの変化、“ジュノンボーイ”の魅力、次代のスターを目指す人へのメッセージなどを伺った。
――「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」とは、どんなオーディションですか?
“あなたの隣のすてきな男の子、推薦してください”をキャッチコピーに1988年にスタートして、今回で33回目となります。業界的には“ジュノンボーイ”は“無垢”なイメージを持たれている方が多いのではないでしょうか。毎年、序盤に編集部員による選考が入るのですが、やはり“ダイヤの原石”というか、出来上がっている子よりは出来上がってない子の方を選んでしまう傾向はどうしてもあります。地方に住んでいて部活しかしてないけど顔がとにかくキレイで、2年後、3年後に一気に大化けする、みたいな子を僕らはどこかで待ってるような気がします。
――時代によって傾向が変わったりしていますか?
原石的な子を発掘するというコンセプトは変わっていないと思います。ジュノンボーイのイメージ、“色白の細い男の子”をまず作ったのは(第2回でグランプリを受賞した)武田真治さんだと僕の今の上司が言ってました。武田さんは“フェミ男”というワードを生んで以降、ずっと活躍されていて、今でもジュノンボーイの話をしてくださってますよね。
■応募者の約4割が“仮面ライダー志望”
――小池徹平さん、溝端淳平さんはどうでしょうか。
(第14回でグランプリを受賞した)小池徹平さんから一気に”ジュノンボーイ=かわいい系“のイメージがしばらく続きました。(第19回でグランプリを受賞した)溝端淳平さんで、ガラッと“正統派”というか。王道の流れができたのではないでしょうか。それ以降は、一気にSNSが普及して、以降のグランプリは本当にひとつのイメージで括られなくなったように思います。
あと、傾向と言いますか、志望動機に多いのが“仮面ライダー”です。おかげさまで、ジュノンボーイ出身者が仮面ライダーシリーズの主演を務めることが多くて、「ジュノンボーイになれば仮面ライダーになれる」というイメージも強くなっています。最近でも志望動機の4割ぐらいがそれだと思います(笑)。
――「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」も「仮面ライダー」シリーズも歴史があって、どちらも若手俳優の登竜門的存在になっていますね。
ジュノンボーイの応募者には中学生の男の子も多いんです。「JUNON」愛読者だったお母さんが、仮面ライダーにコンテスト出身者が多いことを知っていて「仮面ライダーになるためにはジュノンボーイがいい」と教えてくれたり、お父さんも仮面ライダーが好きだったりして、家族ぐるみで応援して参加されてる方も多いですね。
■紙エントリーシートを撤廃 コンテストの“デジタル化”を推進
――家族と一緒に、というのはすごくいいですね。
以前、とある作家さんと「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」について話をしていた時、すごく的確なことを言ってくれました。ジュノンボーイって、ずっと紙のエントリーシートだったんです。WEBやLINEで送るだけ、というオーディションがたくさんある中、いまだに紙に手書きで、写真を貼って応募するというアナログさ。それがこのコンテストの“ピュア”な感じにつながっているんじゃないかって。その話を聞いて、「なるほど」と思いました。
――その“アナログさ”をいとわない人が応募するから、意欲的かつピュアな人がコンテストに集まるということですね。
はい。と言いながらも今回の第33回を最後に紙のエントリーシートを無くすことに決めました。今年は大きな転換期だったと思います。新型コロナウイルスの影響で地方予選ができませんでした。いつもなら全国各地で1000人ぐらいの男の子と会っていたんですけど、今年の状況だとそれは不可能でした。
でも、オーディション管理ツール「Exam Organizer(イグザムオーガナイザー)」を導入したことで、リモートによる選考というのも以前よりも簡単にできるようになりました。それも転換した大きな理由です。このご時世ということで、男の子たちもリモートというのが当たり前の感覚になっていて。CHEERZ for JUNONやSHOWROOMでの企画も4、5年続けてきていますが、今年が一番盛り上がりました。このご時世になったことで、紙を無くす方向に一気に舵を切ることができたんです。
――「Exam Organizer」を導入して、どんなふうに変わりましたか?
今までは、送られてきたエントリーシートの情報を当たり前ですが手作業でエクセルに打ち込んで、男の子たちのデータをまとめるという作業がありました。「Exam Organizer」によって初動のデータ管理がすごく楽になったのは大きいです。
■“ファン参加型企画”を実施する意図 コンテスト後の道筋示す
――CHEERZ for JUNONやSHOWROOMといったアプリを利用した、ファン参加型の企画も審査の一環で行っていますが、どういった意図で実施しているんですか?
僕がコンテストの選考過程やルールを見るようになって4年ぐらいになりますが、その頃から一気にソーシャルメディアの流れが加速しました。それまでは雑誌の投票だけで、男の子たちはハガキで投票されるのを待っているだけの“受け身”でしたが、今はCHEERZ for JUNONやSHOWROOMといったサービスで自ら発信しなくてはいけないシーンが増えています。自己プロデュース力がある方が勝ち進みやすくなってきているのは事実ですね。
また、僕らがコンテスト参加者にSNSを課しているのは、ジュノンボーイになった後の道筋を示すためでもあります。戦うのが芸能界である以上、キャスティングや制作の人は、やはりその子の「数字」を気にせざるを得ないですよね。じゃぁ、「自分が舞台に出たら、何人のお客さんがお金を払って足を運んでくれるのか」。自分のお客さんは、やはり自らの手で切り拓いていくしかないと考えています。
■「JUNON」ブランドそのものを男の子たちの“居場所”に
――ジュノンボーイや候補者によるコンテンツを掲載する動画メディア「JUNON TV」も運営されていて、紙からWEBへの移行という意味では、タイミングが良かったのかもしれないですね。
そう思います。「JUNON TV」を昨年の11月にローンチしました。「JUNON」ブランドそのものが、男の子たちの居場所になったらいいなと思うんです。元々は、コンテストが終わったら芸能事務所に所属して、というのがパターンではありましたが、その手前のジュノンボーイを目指している男の子たちが活躍する場所をWEB上に作りたかったんです。
――女性誌だと「Popteen」(角川春樹事務所)などがそういう場所になってますよね?
「Popteen」さんの動きは注視してます(笑)。他には「MEN’S NON-NO」(集英社)さんも上手いなと思います。今年から「TikTok賞」を新設されていたり、出身者のレベルの高さは言わずもがな、選考過程のブームアップも見事だと思います。
■「“ジュノンボーイ”というイメージを壊してほしい」
――今後、「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」に応募しようと思っている人たちに向けてアドバイスを贈るとしたら。
僕ら運営側や、世間の人の“ジュノンボーイ”というイメージを応募者自身が壊さないと変わっていかないと思うんです。そういう意味では、一昨年のファイナリストの井手上漠くんは、今のSNS全盛の中で生まれた新しい形のジュノンボーイだと思います。
“ジェンダーレス”というキーワードを背景に、彼にはしっかりとした”芯”がありました。そこに多くの人が共感したから、コンテストを経て数万人のフォロワーが生まれていました。そういうのってそれまでになかったので、彼がジュノンボーイになることで「こうじゃなきゃいけない」なんてことはない、って発信してくれた良い例だと思います。
さっき、「こういう系統が…」という話をしておきながらですが、男の子自身がジュノンボーイのイメージや系統、これからの流れを作ってくれると思いますので、「僕は色黒だから」とか「マッチョだから」とか、そういうことを気にせずにいろんな子に受けに来てほしいです(笑)。どんなところが入口でもいいと思っています。YouTubeでもInstagramでもTikTokでも、専門学校生でも会社員でもスポーツ選手でも、とにかく“いろんなところにいる、いろんな男の子に会いたい”という思いですね。
――紙からWEBになることで、応募しやすくなって、間口も広くなりますし。
そうですね。「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」は人生の中でも最大のイベントのひとつになると思います。学校の部活や行事に打ち込むのってすごく素敵なことで、それに近いものだと思うんです。
エントリーして、それからの半年間全力で向き合って、最終選考会のステージに立った時のそこからの景色。グランプリを獲った時に親御さんもみんな泣いて、負けた子もみんな涙流して。そこからたとえ芸能界に進まなかったとしても、一番多感な時期に全力を尽くす、そんな何事にも代えがたい経験をしてもらいたいんです。コンテストに応募する方の中には、審査する僕らのことを戦わなければいけない相手だと思っている方もいますけど、そうではありません。戦うのは自分自身ですし、僕らは夢を一緒に追いかけていって、応援して、最終選考会というステージそしてその後の道を作るために頑張っています。「僕らJUNONと君たちは仲間だよ」とよく言っています。
運営側だけじゃなく、ジュノンボーイ出身の俳優も多くいるので、どんな現場でも「ジュノンボーイ」という縦のつながりが感じられると思います。最終選考会の模様を見ていただいて、その雰囲気を感じてもらえたらぜひ応募していただきたいですね。
- いはら・こうたろう
- 1988年生まれ。2012年、新卒で主婦と生活社に入社後、「JUNON」編集部に配属。2017年10月より「JUNON」副編集長。 2019年11月、JUNON公式動画メディア「JUNON TV」の立ち上げに参画。 「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」の企画統括ほか、「JUNON×SHOWROOM」プロジェクトなど、JUNONブランド拡張の業務全般を担当している。
取材・文=田中隆信